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管理栄養士コラム

2017.11.07 健康寿命の延伸と食生活①
理想的なBMI(体格指数)やたんぱく質摂取について

日本は今や世界最長クラスの寿命を実現し、長寿大国として知られるようになりました。しかし、“健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間”とされる「健康寿命」と「平均寿命」との差は男性で約9年、女性で約13年の差があり、真の健康長寿国とは言い難い状況であります。「健康寿命」を考えるうえで、近年注目され始めた「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群)、略して「ロコモ」という用語があります。ロコモとは「運動器(骨、関節、軟骨、筋肉等)の障害のために自立度が低下し、介護が必要となる危険性の高い状態」を指します。進行すると日常生活にも支障をきたすことから、いつまでも自分の足で歩き続けていくためにロコモを予防し、健康寿命を延ばしていくことが重要視されています。ロコモ予防には、食事と運動が両輪で大切と言われていますが、今回は食生活との関連が深い体重や理想的な体格についてふれたいと思います。

肥満は健康に良くない、太りたくない、そう考えている人は多いと思います。“理想体重はBMI=22”と認識されている方も多いかもしれません。BMI(kg/m2)とは、体重と身長の関係から肥満度を示す体格指数で、具体的にはBMI(kg/m2)=体重(kg)÷身長(m)2という式で算出されます。日本人の食事摂取基準(2015年版)1)では、目標とするBMIの範囲は18~49歳で、18.5~24.9、50~69歳で20.0~24.9、70歳以上で21.5~24.9と示されています。このBMIの範囲は、さまざまな疫学研究から明らかになった総死亡率が最も低いBMIを基に設定されていて、既にお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、どの世代も上限は24.9ですが、年齢が上がると下限が上がっていることがわかります。理想的なBMIは一律にBMI=22とは限らず、高齢者ではやせ過ぎはよくないということなのです。

しかし実際には、平成28年「国民健康・栄養調査」結果2)からは、65歳以上の高齢者ではBMI≤20の割合は、男性12.8%、女性22.0%とBMIが低い方が多く、適切な栄養が摂れておらず低栄養傾向にあること、また、体重やBMIのみでは判断できませんが、おそらく筋肉が落ちている方が多いことが推測されます。高齢者で体重が減ってきている方は、栄養が足りていない可能性があり要注意です。年齢とともに筋肉量が減るのは、摂取するたんぱく質が足りていないことも一因として考えられます。ご高齢の方の中には、「もう年だから肉は食べない方が良いor食べなくても良い」と考えている方もいらっしゃいますが、肉や魚、卵や大豆製品などのたんぱく質を食べないと筋肉が減ってしまい、筋肉が減れば転倒リスクにもつながることから、健康寿命を延ばす観点からは、粗食ではなく、肉や魚などたんぱく源となるものをしっかり食べることは大切なのです。

ここ10年ほどの日本人の食生活におけるたんぱく質摂取量の推移をみてみると、男女問わず若年層から高齢層まで幅広い層で低くなっていることが明らかにされています。高齢者にとってはロコモが進行し、低栄養による転倒や骨折などが多くなり、それをきっかけに要介護、寝たきりとなるケースが今後も増えていくと考えられます。また若年層や中高年齢層にとっても、ロコモとなる時期が早まる恐れがあると懸念されています。 では実際にたんぱく源として何をどれだけ食べれば良いかについては、次回に続きます。

【参考資料】
1) 厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要
2) 平成28年「国民健康・栄養調査」の結果

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