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管理栄養士コラム

2018.11.27 朝食を食べよう!

朝ご飯、毎日食べていますか?食べる時間がない、食欲がない、ダイエット中のため食べない?!などなど、様々な理由があげられそうです。ところで、“朝食を食べないと太る?!”という話、きっと一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。朝食を食べないと、肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームなどになりやすいことは、これまで国内外の疫学研究1)2)で報告されており、体に悪い影響がありそうです。しかし、朝食を抜くと太る仕組み(身体の中で起こるメカニズム)については、実はまだよくわかっていない部分が多かったのですが、ラット(実験動物)を使った最近の研究によって、朝食抜きは体内時計の異常が生じるために体重増加が起こることが明らかになりました3)。

この研究では、ラットに食事を活動期に与える群に対して、4時間遅らせて食べ始めさせる朝食欠食群の2グループに分け、2週間経過をみました(人にあてはめると、朝8時に朝食を食べる人と昼の12時に最初の食事を食べる人にあたるそうです4))。その結果、食べた量は変わらなかったものの朝食欠食群では体重が増加しました。これは、脂肪組織重量が多くなったためで、朝食欠食群では脂質代謝の異常や体温リズムの異常を来たし(体温の上昇していた時間が短く、エネルギーをあまり消費しない)、体重増加をもたらすことが明らかとなりました。このことから、朝食を食べることは体内時計を正常化し、肥満やメタボリックシンドローム等を予防する上でも、とても重要な役割を担っていることが示唆されました。今回の研究は、実験動物(ラット)を用いての結果なので、これまでのヒトを対象とした疫学研究の結果を支持する内容である、と解釈する必要がありますが、朝食は一日の“体内のリズム”を整え、健康的な食習慣を支える上でとても大切であると言えそうです。

朝食を食べる人の生活習慣を観察した別の研究では、朝食を食べる人は果物や野菜の摂取量が多く、健康的な食生活を励行している実態が報告されています1)。平成29年国民健康・栄養調査(国民の健康状態、生活習慣や栄養素摂取量を把握するための調査)によると、朝食の欠食率は男女ともに20 歳代で男性30.6%、女性23.6%最も高く、若い世代の食生活の乱れが懸念されています5)。また文部科学省の全国学力・学習状況調査によると、小学生においても、朝食を食べない児童が増加、2018年度の欠食率は5.5%と前年度に比べて悪化しており、子どもたちの食生活の乱れも指摘されています。小学生児童の場合、朝食欠食は家庭環境の影響も大きいことから、親世代の食育が急務と考えられる中、広島県では小学校1校をモデル校にして、希望するすべての児童に朝食を無償で提供する事業が11月14日から始まりました6)。広島県内では朝食を食べない子どもが増加傾向にあり、学ぶ意欲や学力などへの影響も指摘されていることから、県として対策に乗り出したということです。都道府県がこうした事業を主導するのは全国で初めてで、今後その効果や課題を検証しながら全県に取り組みを広げたい考えです。

朝食欠食の背景には、ライフスタイルや価値観の多様化、経済的事情など様々な要因があり、子どもたちの食生活にも影響を及ぼしている可能性が考えられます。今回は“朝食”をテーマに健康への影響を考えましたが、食べることは生命をつなぐための単なる手段ではなく、人と人とのコミュニケーションを活発にし、円満な家庭環境、良好な人間関係を構築するうえでも大切だと思います。また児童における食事は、箸や茶碗の持ち方など、基本的なマナーや、地域の伝統的な食文化を学ぶ貴重な機会でもあると思います。まずは、子どもたちの将来の健康を守る責任がある大人が、食習慣を見直す必要があるかもしれません。

【参考資料】
1) Smith KJ, Gall SL, McNaughton SA, Blizzard L, Dwyer T, Venn AJ. Skipping breakfast: longitudinal associations with cardiometabolic risk factors in the Childhood Determinants of Adult Health Study. Am J Clin Nutr. 92:1316-25, 2010.
2) Kubota Y, Iso H, Sawada N, Tsugane S; JPHC Study Group. Association of Breakfast Intake With Incident Stroke and Coronary Heart Disease: The Japan Public Health Center-Based Study. Stroke. 47(2):477-81, 2016.
3) Shimizu H, Hanzawa F, Kim D, Sun S, Laurent T, Umeki M, Ikeda S, Mochizuki S, Oda H. Delayed first active-phase meal, a breakfast-skipping model, led to increased body weight and shifted the circadian oscillation of the hepatic clock and lipid metabolism-related genes in rats fed a high-fat diet. PLoS One. 31;13:e0206669, 2018.
4)朝食を抜くと体重が増えるメカニズムは体内時計の異常であることを解明!
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20181101_agr.pdf
5) 平成29年「国民健康・栄養調査」の結果
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf
6) 児童への朝食提供モデル事業開始
https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20181114/0002911.html

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