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管理栄養士コラム

2024.09.19 日本人の身体状況について
-直近10年間で、男性(20歳以上)の肥満者の割合(31.7%)は有意に増加、20歳代女性のやせの者の割合は19.1%-

残暑厳しい日々ですが、最近は虫の音も聞こえるようになり、少しずつ秋も近づいている気配を感じるこの頃です。皆様お元気でお過ごしでしょうか。

先日、厚生労働省より、令和4年「国民健康・栄養調査」の結果概要が公表されました。この調査は、国民の身体の状況、栄養摂取状況及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康増進推進を図るための基礎資料を得ることを目的に実施されている調査です。

その中で、身体状況として、男性の20歳以上の肥満者(BMI≧25㎏/m2)の割合は31.7%で、直近10年間で有意に増加したことが明らかにされています。国際的に肥満の割合は増加の一途をたどっており、日本においても男性については長期的に増加し続けている状況で、令和4年の同調査の結果によると、20歳代で19.1%、30歳代で31.9%、40歳代で33.7%、50歳代では40.1%と、全年齢層の中で50歳代はもっと高い割合を占めています。一方、女性においては、肥満者の有意な増減はみられませんが、若い女性(20歳代)のやせ(BMI<18.5kg/m)者の割合の高さが懸念されているところです。令和4年の調査結果では、20歳代のやせの者の割合は19.1%で、およそ5人に1人がやせの状態であることが明らかになりました。日本でもともと若年女性のやせが多いわけではなく、1980年頃は15%に満たない割合でしたが、1990年頃から2009年にかけて増加傾向で推移し、2010年には29%に達し(およそ3人に1人がやせ)痩身化が進みました。その後減少、横ばい傾向を示しており、20%前後で推移している状況で、15年前より改善傾向にあるものの、未だその割合は高く、食糧不足による低栄養のリスクが低い先進国においては、特異的な状況にあります。このように、現代の日本においては、成人男性の肥満やメタボの問題がある一方で、若年女性のやせや高齢者の低栄養が健康課題となっていることがわかります(若年女性のやせに関する健康課題については、次回のコラムで概説したいと思います)。

ここで、体重の増減について整理しておきましょう。体重はエネルギー(いわゆるカロリー)摂取と消費のバランスが基本となり、エネルギー摂取量と消費量のバランス維持を示す指標としてBMIがあります。BMIは[体重(kg)]÷[身長(m)2]で求められ、日本肥満学会の基準では、25以上を肥満、18.5未満は「低体重」(やせ)と定義し、18.5以上25未満は「普通体重」に分類されます。

「肥満」または「やせ」と判定された場合には、目標とするBMIに近づけるために、エネルギーの摂取と消費の調整およびエネルギー摂取量の適正化が重要となってきます。総エネルギー摂取量の適正化(カロリー調整)は、体重コントロールに密接に関連しているのですが、一般に「肥満」の場合は、食事と運動を組み合わせた減量が基本となり、まずは現体重の3-5%の減量を目標とします。令和4年の国民健康・栄養調査では、身体活動・運動に関する調査も実施しており、20歳以上の歩数の平均値は男性6,465歩、女性5,820歩で、こちらも直近10年間で男女とも有意に減少していることが報告されています。それでは、どれくらいの歩数を目標とすると良いか、というと、「健康日本21(第三次)」(国民健康づくり運動)の身体活動・運動の目標値が参考になります。「健康日本21(第三次)」では、運動だけではなく、生活活動も含めた身体活動全般を反映した指標として歩数の目標が設定されていて、成人男女各8,000歩/日、高齢者男女各6,000歩/日が国民全体の平均値として設定されている目標歩数になっています。毎日ご自分がどれくらいの歩数で活動しているのか、もし把握されていない方は1日を通して歩数を計測してみると良いかもしれません。

適正体重を維持するためには、身体活動量の維持も重要で、身体活動には体重コントロールに加え、生活習慣病の予防、身体機能・認知機能の維持向上といった、日本人の抱える健康課題を解決する様々な効果が期待されています。ダイエットにおいては、エネルギー(カロリー)コントロールに目がいきがちですが、バランスの良い食事に加えて、日常生活の中で身体を動かすこと(階段昇降や掃除機をかける、お風呂掃除をするなどの家事も、立派な身体活動のひとつです)を意識した生活を実践することも、体重コントロールへの近道かもしれません。

参考文献
1.令和4年国民健康・栄養調査結果の概要:
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001296359.pdf

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